人権はだれのものか 新版

人権はだれのものか

人権はだれのものか

2000-08 書店(東京) 2100円 /2005-10-22 ★2(5章のみ★4)

法を学ぶ一環として、人権論を学ぼうと思い読みました。しかし、その目的は達成できなかったように思います。時事・社会の読み物としては、少しは役立ったかもしれません。

報道やドキュメンタリーではないので、中立的な観点から、大きくかけ離れた表現になっています。人権擁護側からの執筆なので、仕方ないと思いますが、鵜呑みにすることは、好ましくないです。

この手の書籍に多いのですが、複数の執筆者間で、文体や内容にバラツキがあります。悪く言うと、寄せ集めに過ぎません。そのためか、まえがきでは「興味のあるところから読んでいただければ結構です」と書いてあります。

1章1(子ども)や2章(女性)などで、引用のルールや語法を誤っていて、内容よりも先に、文そのものの質が疑われます。推敲や校正が行き届いてないのかもしれません。さらに、2章では、引用文が多くて、コピペだらけの大学生のレポートみたいに読みにくかったです。

信頼性を高めるためにデータを示すのは、もっともなことです。しかし、図表で表さないでいで、文で示すのは、理解を面倒にさせているだけです。

当時としては、タイムリーな話題を扱っている章が多いです。しかし、発刊から6年経っているので、「じゃあ、現在ではどうなってるの?」といった疑問が沸くばかりでした。つまり、今となっては古いことばかりとなっているようです。改訂版の発刊を期待します。

ただし、5章(勤労者)だけは、哲学的アプローチから考察されているので、いま読んでも、読み応えがあります。たぶん、10年後に読んでも面白いと思います。さらに「知を嗜む」といった傾向の強い私には、非常に面白い文でした。一方で、時事的な要素が少ないので、5章で扱っている勤労者の人権についての知識は増えませんでした(ほかの書物で補います)。

9章では、章を通して哲学的なアプローチで書かれています。しかし、911テロ以降では、世界が大きく変わってしまったので、あまり意味をなさないように思えます。さらに、海外作品を翻訳した文みたいで、いたずらに形容詞が多く、読みにくく、理解しにくいです。いくつかのメッセージがあるようですが、それらを冗長的な文でつなぎ合わせただけにしか映りません。執筆者は理解されているのでしょうが、私には到底理解できません。

7章(在日朝鮮・韓国人)にかんしては、ネットなどで反論を散見するようになってからは、この類の意見は、いささか行き過ぎているような気がします。発刊当時に読んでたら、鵜呑みにしていたかもしれません。

文そのものとしても、内容としても、1章2、3章、4章あたりのクオリティで書いてあれば、価値のあるものだったと思います。

わかりやすい文を書いている人は、講義(話)を聞いても、わかりやすいものだということに気づきました。

最後に、さまざまな集団の人権を取り上げているけど、患者と貧困層の人権が解説されていないです。患者になってしまうと執筆できないとか、執筆者のようなインテリに貧困層がいないとか、貧困層に多い低学歴では文が書けないなど、根本的な問題が隠されているようです。