詭弁論理学 中公新書448

2007-11-13 図書館閉架809.4キ (380円) ★5 2007-11-13/27
2008-11-18 BKMS 100円(440円) 蔵書購入

感想

詭弁の古典。じゃっかん古いけど、いまでも楽しく読める内容だった。

会話術としての詭弁を望んでいたけど、後半は論理学だった。けど、詭弁のほかに、強弁というのもあることを知った。

かつて、詭弁や強弁を振るわれて、いまでも腹立たしい思いをすることがあるけど、この本によって救われたところがある。

メモ

p.19に「権力者が法律を操作して強弁を通したきわめて深刻な例は、朝鮮半島における日本の植民地支配にもみられる。一九〇五年、大韓国(当時)の外交権を奪った条約(乙巳保護条約)などは、『韓国代表を会議室から追出し、外務大臣印を強奪して捺印した』というから無茶な話であるが、そんな条約でもできてしまえば権力者側の盾となり、実情を訴えに万国平和会議(ハーグ)に赴いた韓国代表団は、その条約(外交権喪失)を理由に、出席を拒否されたという」とあるけど、ウヨの弁明が聞きたいところだ。

強弁術の要旨(p.52)

  1. 相手のいうことを聞くな
  2. 自分の主張に自身を持て
  3. 逆らうものは悪魔である(レッテルを利用せよ)
  4. 自分のいいたいことを繰り返せ
  5. おどし、泣き、またはしゃべりまくること

選挙演説することを、ラテン語でグロリオール(glorior)というらしく、英語のglory(栄光・名誉)の語源らしい。そのグロリオールのもともとの意味が「自慢する」とか「ほらを吹く」ことらしく、吹いてしまった。p.61

p.70で、「欧米に法廷では、証人に『誰がどんなふうに思っていたか』を証言させることはしないそうである。日本の法廷では『当事者甲は当事者乙を憎んでいるにちがいない』という証言も行われた例があるというから〔略〕」とある。いまでも行われているのか知りたい。

詭弁術の総括(p.116〜)

健全な結論でない場合、「あなたの考え方には、ついていけません」で反論は十分だという。ほかに、「媒概念曖昧の虚偽」があるから、言葉の意味について、特殊な意味のか、一般的な意味なのか確認しないとならない。

正しい議論のための原則(p.121)

  1. 無理やり説得しようとするな
  2. 時間を惜しむな、打ち切るのを惜しむな
  3. 結論の吟味を忘れるな(結論の現実性、弱点などを明確にしておく。健全な常識に反してないか)
  4. 「わからない」ことを恥じるな
  • 二分法:中間的な場合。開き直ったらどうなるか
  • 相殺法:相殺されるバランス。インバランスだと、どんな点での違いが重要か
  • 消去法:消去の仕方が乱暴・見落とし。結論は受け入れられるか
  • ドミノ理論:現実性。実現する労力+副作用と、期待される結果とのバランス
目次
  1. 議論の種々相
  2. 強弁術:強弁術の誕生、小児型強弁、二分法、相殺法、強弁術の総括
  3. 詭弁術:詭弁術の誕生、強弁との境、あてにならない話、論理のすりかえ、主張の言いかえ、消去法、ドミノ理論、詭弁術の総括
  4. 論理あそび:やさしいパズル、説得ということ、上級パズル、四十人の貴族とその従者、理髪師のパラドックス、自己矛盾を利用したパラドックス、死刑囚のパラドックス、<付録>鏡をめぐっての会話