経済学的思考のセンス お金がない人を助けるには 中公新書1824

2007-12-04 図書館331.04ケ (819円) 2008-01-02/14 ★4

感想

プロローグに書かれていたことの答えが知りたくて、読み進めても、なかなか答えがなく、タイトルと違うだろとか思いつつ、IV章に入ってやっと答えが書かれていた。

俺の知っている経済学と違ったが、あとがき近くになってやっと解った。どうやら行動経済学といわれる分野らしい。

「痛みをともなう改革 」とは、失業させ、自殺させることだっというのが確認できた。あと、銀行の不良債権は処理できたけど、人的な不良債権を増大させたのもわかった。

●追伸 2008-04-12 15:00

NHKラジオ第1 かんさい土曜ほっとタイム(2時台)「おもしろ人物ファイル」大阪大学社会経済研究所・教授 大竹 文雄を拝聴しました。大変面白かったです。

大竹文雄のブログ: ラジオに出ます http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2008/04/post_7353.html

中流意識の強い国の方が発展すると言ってたけど、たしかに、頑張ったら相応のリターンがある方が、みんな頑張るよな。ニートの増加というのは、トップの総取りということの裏返しなんじゃないかと思ったり。

メモ
  • 45 #「地震保険と災害保険税」あたりの議論は中途半端だと思う
  • #理論は理解できる。けど「明日から税金が上がりますよ」とか言われても、貧困層とか引越しできないだろう
  • 104 #メダル数の獲得を決定する要因を、「一人当たりGDPと人口の両方」だと述べているが、要はGDPのことだと思う。要素によって係数が違うのかと思ったけど、どちらかの要素が1%増えても、同じだけメダル数が増えるというのだから、やっぱりGDPと相関があるということだ
  • 129 「もともと、長期雇用慣行の労働者の比率は、二十パーセントとか三十パーセントにすぎないといわれてきた。」
  • 136 「既得権を崩すことを政治に頼れない若者は、フリーターになって国民年金を未納にすることが、公的年金破綻の時期を早めることよく理解しているのではないか。国民年金未納は既得権世代に対する若者の逆襲なのである。」
  • 174 「若年者の失業率が高くなることによる潜在的なコストは大きい。若者が長期間仕事の経験を積まないでいると、将来の日本の人的資本のレベルは低下してしまうかもしれない。」
  • 176 「つまり、「犯罪の検挙率が低い」「犯罪に対する罰則が小さい」「合法的な職が得にくい」「合法的な仕事からの賃金が低い」といった場合に犯罪の発生率は上昇する。」
  • 199 「パソコンを使って仕事をしている労働者は、そうでない労働者よりも賃金が一〇〜十五パーセント程度高いことを実証的に示した。」
  • 199 「…低学歴の労働者の場合には、パソコン利用が賃金引き下げの要因とさえなっていることが示されており、IT革命は学歴間賃金格差の要因となっていることを示唆している。」
  • 中谷のIT革命万歳論とか、勝間のノートパソコン買えよ論が、途端に胡散臭くなった
  • #高学歴がパソコンを使うと効果が出る
  • 200 ITの特徴:データの蓄積・伝達能力の拡大・コスト低下
    • ボトルネック(コンピュータにできないこと):判断能力、解析(分析)能力
    • 勝間和代:(コンピュータにできないこと)は、「複数の分野にまたがる知識から判断する意思決定と、リーダーシップでしょう。」
    • 企業組織の分権化、自律的な働き方、同僚や顧客との対応能力 ≒ 高学歴者の能力
  • 213 「勤労意欲の低下という「真の国民負担」を最小にすることこそが、税制改革・社会保障改革に求められる。」
  • 218 「…将来の逆転が可能な社会にしていくことが、若年層に広がる閉塞感を打破するために必要であろう。低所得フリーターから脱出できるような仕組みをつくることが急務である。」
  • 223 「「経済学的思考のセンス」がある人とは、インセンティブの観点から社会を視る力と因果関係をみつけだす力をもっている人だと筆者は考えている。…」
  • 新卒採用しかしない日本型の採用慣行では、景気が悪い時期に就職した世代の生涯賃金は、景気が良い世代より低い。ロストジェネレーション(ロスジェネ)・就職氷河期棄民組ってのも、わりとウソじゃないようだな。
目次

プロローグ お金がない人を助けるには?

I イイ男は結婚しているのか?

    • 1 女性はなぜ、背の高い男性を好むのか?
    • 2 美男美女は本当に得か?
    • 3 太るアメリカ人、やせる日本女性
    • 4 イイ男は結婚しているのか?
    • 5 自然災害に備えるには?
    • 6 人は節税のために長生きするか?

II 賞金とプロゴルファーのやる気

    • 1 プロ野球における戦力均衡
    • 2 プロ野球監督の能力
    • 3 大学教授を働かせるには?
    • 4 オリンピックの国別メダル予測
    • 5 職務発明に宝くじ型報奨制度
    • 6 賞金とプロゴルファーのやる気

III 年金未納は若者の逆襲である

    • 1 日本的雇用慣行は崩壊したのか?
    • 2 年功賃金は「ねずみ講」だったのか?
    • 3 年功賃金と成果主義
    • 4 年功賃金はなぜ好まれる?
    • 5 賃金カットか人員整理か?
    • 6 失業がもたらす痛み

IV 所得格差と再分配

  • 個人の格差と世帯の格差
    • 勝ち組と負け組 世帯格差の動き 世帯形態の変化 女性の働き方の変化
  • 見かけの不平等と真の不平等
    • 所得獲得のタイミングと人口高齢化の影響 生涯所得の格差 消費格差 高齢化と所得格差 IT革命と賃金格差 低成長経済と賃金格差
  • 所得格差と「小さな政府」
    • 所得再分配政策の支持 不平等と政治 高齢層での格差縮小・若年層での格差拡大 低い負担と高い負担感 「真の国民負担」とは何か

エピローグ 所得が不平等なのは不幸なのか

  • 誰が所得の不平等を不幸と感じるのか 所得の平等か機会の均衡か 経済学的思考のセンス