ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか ちくま新書687
2008-01-25 WGT 777円 2008-01-26/29 ★5 図書館寄贈 007.3
感想
最近、「ジョブカフェ京都 eラーニング」を見てみたり、北尾吉孝『何のために働くのか』を読んだりと、どうやら「働く」ということに関心があるのに気づいた。働かなければならないと感じているんだと思う。
遡れば、2000年に、中島義道『働くことがイヤな人のための本』を読んで、まったく働く気が起きなかった。そして、昨年2007年に、伊吹卓『「バカ」になれる人ほど「人望」がある』、山田雄一『企業のなかでどう生きるか』と読んだけど、昭和時代の大企業で生きるための知識でしかなかった。
北尾吉孝『何のために働くのか』を、私は酷評した。これもまた昭和時代の大企業で生きるための知識であり、精神論でしかないことによるものだろう。新卒採用という日本の採用慣行のために、その道を鎖されていて、そこに生きる術がないことへの怒りでもあると思われる。
これまでは、会社に入って「働く」ということは、人間性を失うことであり、下手をすると、命を奪われることとしか思っていなかった(会社に入ってではなくて、期間工やアルバイトとして「作業」するということだが)。最近は、自分の弱さを、感情的に忌み嫌って意識しないのではなく、客観的に対象化し、問題解決すべきものの1つと捉えるようになれた。
今回、『ウェブ進化論』の続編のつもりで買った。読んでいくうちに、何だか違うぞと思ったら、サブタイトルに「いかに働き、いかに学ぶか」と書いてあって納得した。いままで、何度か気になっていて、本屋でも何度か手に取ることあったんだけど、お金が無いので買わないでいた。ここに来て、何気なく買ってしまったことに、「神」や「潜在意識」の存在を信じてしまいそうな気分。
ビジネスとか「働く」とかといった方向性に、あれこれ悩んでいたから、非常に参考になった。「けものみち」を行く生き方が紹介されているけど、「けものみち」に放り出された私としては、大きなヒントとなった。
著者の文が、何となく読みにくいと感じていた。先ほど、文の書き方を調べていたこともあり、どういう点が悪い文なのか良く分かった。
著者の父は、劇作家だったらしい。「なんだ、この父あってこの子なんだな」とか思った。しかも、この人、慶応大卒・東大院修了かよ。かなり能力のある人が「けものみち」という方向もあるだけ。俺のような能力の低い人間は、労働ダンピングに遭って、買い叩かれればいいだけ。
なお、反対意見として、西垣通『ウェブ社会をどう生きるか』を読み比べてみたいと思っている。
もっともヒントになったのは、ベンチャーとスモールビジネスの違い。
追加 2008-02-04
著者は、慶応大卒・東大院修了という高学歴だから、能力に自信があるだろう。
しかも、48歳で、団塊ジュニア世代以下じゃない。日本社会の右肩上がりを体感してきたんだろうし、アメリカのシリコンバレーなんかで働いていたから、たえず右肩上がりを実感していたと思う。
なので、オプティミズムになっても不思議ではない。
ただ、こういう時代を作り、社会を作る人が、オプティミズムになってくれないと、やってらんないわな。
メモ
- 73 クレイグのリスト
- 「サンフランシスコのローカル情報(不動産、求人、出会い、買いたいもの、売りたいもの)を交換するためのシンプルなサイトを作った」
- 92-94 大組織で成功できる要素(要約)
- 配属・転勤・配置転換を「未知との遭遇」として楽しめる
- 問題解決に情熱を傾ける。難しいほど面白く思う
- 好き嫌いやこだわりが細かくなくおおらか。人へも同様。かりにあっても克服することを好む
- 「ルール」をすぐに習得して勝つことに邁進する
- 多くの人と力を合わせることに充実感を覚える
- 巨大なものへの関与・貢献に達成感・充実感。持久的体力に優れる
- 忠誠心や使命感>個の志向性、と考える
- #変な本よりよっぽど参考になった
- 106
- 「『明日会社を辞めることになったらまず何をする?』と尋ねたところ、彼は、絶句してしまった。」#彼は、日本の若者(二十代後半)
- #ずっとニートやってると、この手の耐性がつくんだなと思った。たとえ親が死んでも、事業計画を練っているだろうし、いずれ何らかの事業を起こすだろう
- 129 「ADL情報電子産業フォーラム」事業
- #「情報起業」どう違うのかわからない
- 155 「参加者を限定して「非公開」にしたプライベートな知的生産空間を、私たちは自由に形作ることができたのである。」#カッコ内略
- 156 ネット上の記事をログインを必要とするページへのコピペ
- #日本の著作権法とその裁判例を見る限り、権利を侵害している。自己が所有するHDDに保存しているのではなく、はてな社が所有するHDDに保存しているから、私的利用といえない
- #といっても、現実問題として、発覚や摘発される可能性は低いし、権利の侵害も度合いも小さい
- #もっとも厳しい見方をした場合であって、私としてはこういう状態を支持しているわけでないです
- 172 「英語力を徹底的に磨くことこそがこれからの知的生活の充実に必要不可欠だ」
- 208-209 ウェブ・リテラシー(要約)
- ネットの動作原理をかなり詳しく理解する
- ウェブ表現するためのサイト構築能力(ブログサービスを使うレベルでない)
- 新技術をすぐに取り入れてサイト構築してしまう。「バーチャル経済圏」の理解
- ITやウェブの理解力とプログラミング能力
- #なんだ俺がやってきたことじゃないかw
目次
序章 混沌として面白い時代
- 一身にしてニ生を経る
- オプティミズムを貫く理由
- 「群集の叡智」元年
- グーグルと「産業革命前夜」のイギリス
- 学習の高速道路と大渋滞
- ウェブ進化と「好きを貫く」精神
- リアルとネットの境界領域に可能性
- フロンティアを前にしたときの精神的な構え
第一章 グーグルと「もうひとつの地球」
- 営利企業であることの矛盾
- グーグルはなぜこんなに儲かるのか
- 奇跡的な組み合わせ
- グーグルの二つ目の顔
- 「もうひとつの地球」構築の方程式
- 「経済のゲーム」より「知と情報のゲーム」
- 利便性と自由の代償としての強さを
第二章 新しいリーダーシップ
- 人はなぜ働くのか
- まつもとゆきひろが起こした「小さな奇跡」
- オープンソース成功の裏には「人生をうずめている人」あり
- ウェブ2・0時代の新しいリーダー像
- ウィキペディアのリーダーシップ
- 「知と情報のゲーム」と「経済のゲーム」の問に起きる齟齬
- 事業機会を失ってもコミュニティの「信頼」を
- なぜネットでは「好きなことへの没頭」が続けられるのか
- 良きリーダーの周囲に良き「島宇宙」ができる
- 総表現社会参加層の台頭
第三章 「高速道路」と「けものみち」
- 高速道路を猛スピードで走る少女
- 日本のシステムで息苦しい思いをしている人のために
- 「高く険しい道」をゆくには
- 「見晴らしのいい場所」に行け
- 高速道路を降りて「けものみち」を歩く
- 「五百枚入る名刺ホルダー」を用意しよう
- 「流しそうめん」型情報処理、つながった脳、働き者の時代
- 「けものみち力」とは
- 正しいときに正しい場所にいる
第四章 ロールモデル思考法
- ロールモデル思考法とは何か
- なぜ「経営コンサルティング」の世界に進んだか
- ロールモデルの引き出しをあける
- 「十九世紀初頭の新聞小説」とブログ
- 日本の若者を応援するときのロールモデル
- 自分の志向性を細かく定義するプロセス
- ブログを褒める思考法
- 生きるために水を飲むような読書、パーソナル・カミオカンデ
- 行動に結び付けてこそロールモデル思考法
第五章 手ぶらの知的生産
- 知のゴールデンエイジ
- 世界中の講義・講演を瞬時に共有できる時代
- 十年後には「人類の過去の叡智」に誰もが自由にアクセスできる
- 手ぶらの知的生活
- これからの知的生活には資産より時間
- ネットは知恵を預けると利子をつけて返す銀行
- 「文系のオープンソースの道具」が欲しい
- 群衆の叡智を味方につける勉強法
- ネット空間の日本語圏を知的に豊穣なものに
第六章 大組織VS.小組織
- 情報共有と信頼
- やりたいと思う仕事に自発的に取り組む
- 情報共有と結果志向型実力主義
- 有事には情報共有を前提とした組織になる
- 小さな組織は情報共有で強靭になれる
- 小さな会社で働き、少しでもいい場所に移ろう
- 「三十歳から四十五歳」という大切な時期を無自覚に過ごすな
- 自らの内部にカサンドラを持て
- 「古い価値観」に過剰適応してはいけない
第七章 新しい職業
- 「新しい職業」と「古い職業」
- 「新しい職業」の誕生を信じる人は「ウェブ・リテラシー」を
- オープンソースが生んだ新しい「雇用のかたち」
- 「志向性の共同体」とスモールビジネスの経営
- スモールビジネスとベンチャー
- ビル・ゲイツの後半生を徹底肯定する
- 世界の難題の解決にネットが本格的に利用される時代
終章 ウェブは自ら助くる者を助く
- 人工国家に似た「もうひとつの地球」ができれば
- より求められる「自助の精神」
- サバイバル優先、すべては実力をつけてから