人生問答 下

2008-02-11 図書館閉架304 (700円) 2008-06-17/06-25 ★3
実際に読んだのは、単行本・下巻(1200円)の一部

感想

日本が経済大国にのし上がったころに書かれたもので、当時、物質的豊かさは達成できたけど、精神的豊かさが乏しくなったことが叫ばれていた。このため、池田がしばしば「精神」を強調している。

しかし、今日、ネットでは、Web2.0などに代表されるように「共有知」などと言われていて、精神を共有していきている。つまり、精神と物質の対立から、精神共有と対物質精神の対立にシフトしているんのではないかと思う。いままで物質(文明)などを、さんざん批判してきた人たちが、ここにきて、共有された精神から取り残されている状態が皮肉で笑える。また、そういう人に限って、ネット批判をすることが多いと思う。

池田は「人間疎外」について言及している。一方で、派遣労働という社会システムを(間接的ではあるが)後押ししている。そこでの人間疎外が原因となって、東京・秋葉原通り魔事件も発生している。加害者の犯行に至るまでの人間疎外は当然酷いが、被害者の人間疎外は著しい。

1975年の文献に「アジアの反日感情」の項が立てられている。そして、ウヨが、30年も経過して「アジアとはどこの国ですか?」と反論したのを覚えている。文中には「先の田中前首相の東南アジア諸国訪問では、それまで積もっていた対日不信が、一挙に爆発しました」とか「田中首相(当時)の東南アジア訪問のさいの反日デモは〔略〕」とあるので、当時、東アジアや東南アジア諸国反日感情があったようで、そられをまとめて「アジア」と言ってたようだ。

なお、当たり障りのない奇麗事を言及する方法の研究になった。

メモ
  • 学問研究を行う体制:池田「私は、現在の国情、国家、企業の要請を受け入れつつも、むしろ、長期的な見通しにたって、思いきって、要請のない分野であっても研究費を投入し、教室の数をふやすべきではないかといいたいのです」
  • 親と子の関係:松下「最近のわが国においては、親がわが子を捨てたり、殺したりするといった事件が続出しています」#30年前もいまも同じじゃん
  • 世代の断絶は存在するか:池田「老人になるほど、人間は自分が逞しく生きた過去にいっさいの価値をおこうとするものです」#老害を理解しているのに老害
  • どこに発展の基盤をおくか:池田「私は、きたるべき二十一世紀は「生命の世紀」でなければならないと考えております」
  • 経済復興の要因:池田「〔略〕経済的弱者と呼ばれる人びとの悲哀というものを、直視せざるをえないのです」
  • 望ましい経済発展の方向:池田(問)「〔略〕今日の経済的・物質的豊富さを生み出した半面、公害問題・人間疎外等の現代社会の諸問題をもつくりだしてきました」
  • 天皇のもつ意義:池田「〔略〕天皇家は権力の道具にされてきたということです。〔略〕ほとんどの時代は、天皇家が実権を握ったことはなかったいってよいでしょう。〔略〕したがって、王室が権力をもち国を統治するという意味で天皇家が連綿とつづいていたのではなく、時の権力者が、さまざまなかたち、意図のもとで天皇家を利用して、みずからの存在を権威づけようとしてきたというのが実情のようです」
  • 人類の平和を築く道:池田「〔略〕物理的暴力による死刑や殺人を禁止していながら、他方では国家自体が物理的暴力の装置をそなえ、国家の自衛権とか交戦権と称して、互いに国家主権を主張して譲らず、人間と人間が殺し合う戦争行為を合法化しているのです」#ここでふと、「みな凡夫」などと言うのに、池田に御書解釈権があって、一般の学会員には解釈権がない構造に似てると思ったんだよな。権威というものは、すべてそんなもんなんだろうと思うけど。
  • 文武両道の国家:池田「かつて、通用した概念が、現代にもそのまま適用できるとは、必ずしも、いいきれません。むしろ適用できないことのほうが多いでしょう」#なら、創価学会の教義のほとんどは適用できないだろw
リンク
目次

8 何のための教育か

  • 教育の目的 / 義務教育の基本的理念 / 教育の改善すべき点 / 学問のための学問では / 学問と実生活 / いかなる人間に育てるか / 学問の自由・大学の自治 / 創価大学の精神と実践 / 私立大学の特質 / 大学教育の在り方 / 学問研究を行う体制 / 教育権の独立を / 教育の普及と犯罪の増加 / 学校教育と家庭教育の関連 / 教師の選び方 / 教育における父親の役割 / 親としての責任 / 子供は誰のものか / 賞罰の必要性 / 歴史教育と古代神話 / 性教育について / 学問の専門家と総合化 / 統合の原点に“人間の学”を / 人間学構築への提言

9 現代文明への反省

  • 科学の進歩に欠落していたもの / 科学の発展にともなう矛盾 / 心の豊かさを生みだすには / 新しい学問創造の指標 / 精神の荒廃を救うには / 人間疎外の克服 / 物質的豊かさの陰で / 消費文明からの転換 / 心の成果を積み重ねるには / 哲学の復興を / 自然保護のために / 水産資源の将来 / 資源枯渇と人類の生存 / エネルギー資源の共同開発 / 人口過疎化の防止 / 大都市の過密解消 / 交通戦争の終息 / 都市交通機関の開発 / 親と子の関係 / 核家族における人間関係 / 世代の断絶は存在するか / 映像文化と活字文化 / 人間の幸福こそ文化の基準 / 自然観の変革 / 人類の危機をどう乗り切るか / 終末観流行の原因

10 日本の進路

  • どこに発展の基盤をおくか / 国家目標の設定 / 国としての命運 / 世界に対して担う役割 / 日本民族の特質 / 伝統の根底にあるもの / 「恥」の意識の評価 / 憲法改正の基準は / 改憲論の背後にあるもの / 安全と生存を守る道 / 憲法をどうみるか / 自衛隊強化は必要か / 国家防衛の考え方 / 経済復興の要因 / 望ましい経済発展の方向 / 経済の危機と転換の道 / 外交・経済交流の在り方 / 発展途上国への経済援助 / アジアの反日感情 / 国際感覚を身につけるには / 日中友好の姿勢 / 和の精神は日本の伝統か / 太平洋戦争と植民地解放 / 天皇のもつ意義 / 伝統をみる目 / 地方自治の強化策

11 世界平和のために

  • 真の世界平和とは / 人類の平和を築く道 / 世界平和を目指す実践 / 平和というものの姿 / 平和のための前提条件 / 世界の国家の在り方 / 世界連邦の可能性 / “世界語”は必要か / 国連の効用と未来 / 武力の均衡をどうみるか / 戦略兵器制限交渉と米ソの姿勢 / 国家防衛の在り方 / 文武両道の国家 / “愛国心”について / 人材をもって世界の平和に寄与 / 資本主義と共産主義の対立 / 中国の社会主義路線 / 毛沢東周恩来 / 文化大革命について / 中東紛争解決の道 / 中東民衆の平和のために / アジアは共有の基盤にたてるか / アジアに共同体は可能か / 平和を守る義務