人生の価値について 新潮選書

1996/1997 IKNT 1100円 2008-09-21/26 ★4 図書館蔵書914.6

感想

発刊当時にタイトルに惹かれて買ったと思う。当時、読んだんだけど、II部あたりで、難しくなって読むのを止めたまま、ずっと放置していた。ただ、マキアヴェリの『君主論』を読みたくなったのだけ記憶している。

今回も、II部からIII部にかけて、予備知識の乏しさも加わり、哲学的な展開が理解できず、難しく、読むのが辛かった。このあたりまでの感想だと、本の買い方を知らない時代に、タイトルに騙されて買った本。あとがきを読めば、不要だったことがわかる。

けど、IV部に入ってから、インドの不可触民といったカースト制度に触れていて、途端に面白くなった。文中で紹介されている、山際素男『不可触民―もうひとつのインド』isbn:4380812367 (isbn:4380812367)や、辛島貴子『私たちのインド』isbn:4122009952 に目を通したくなった。

喫緊の問題に答えを与えるものではないけど、「人生」という長いものにたいして、いろんな見方を与えてくれるという意味では、示唆のある本だった。

メモ
  • 41 一四 ふたたび 自由と平等:「一方の人間の自由は、他方の人間の不自由を意味する。したがってお互いに自由を主張し合っていれば、必ず優勝劣敗が生じる。」
  • 176 七八 不寛容な社会:「不寛容な社会の特徴は安っぽい正義、ペティ・ジャスティス(けちな正義)が大手を振って、罷り通ることである。#いまの日本、とくにネット社会じゃないかと思ったり
  • 180 七九 差別と区別:「「区別」といえば近代社会になじむ…人間が人間を区別するのは「評価」ということにもつながるからである。」
  • 203 八八 後悔について:「自分がなにかの行動をした結果がたとえ悪と判明したにしても、その結果から問題を判断してはいけないと言っているのである。」
  • 204 「失敗や過失を否定するのではなく、むしろ歓迎するという思い切った心の転換こそが必要ではないか」
  • 229 九九 自覚の限界について:「…宿命主義の持つ偉大な理性は、…いいかえれば一種の冬眠への意志だといえる。」
  • #株式の格言「休むも相場」とか、心理学の「学習性無力感」を思い出した。
目次

I

  • 無知の権利 / 自分への幻想 / 褒められること / 成功と失敗 / 人生の評価 / 真贋について / 虚飾について / ふたたび 真贋について / 虚栄について / 自由と混沌 / 独創性について / 芸術と個人 / 自由と平等 / ふたたび 自由と平等 / 自由と競争 / 自由の隠し場所 / 福音について / 理解について / 行為と言葉 / 思想ということ / 書物の運命

II

  • 無私について / 現実について / 運命について / 賭けと現実 / 現実は動く / 理想と現実 / 政治と道徳 / 統治について / 思想の背後 / 知ってしまった悲劇 / 孤独の怒り / 始皇帝の展覧会をみて / 出会いの神秘 / 聖人と政治 / ふたたび 聖人と政治 / 内政と外交 / 言葉が届かない / ある歴史物語(一) ・ (ニ) ・ (三) ・ (四)/ 悲劇について(一) ・ (ニ) ・ (三)/ 行為と無 / 人生の主役

III

  • 落ちていく自分 / 破壊について / 危機の時代 / 狂気と正常 / 疾走する孤独 / ニヒリズムについて / 遊戯と真剣 / 不自由への欲求 / 青年の変貌 / 自閉衝動 / 深まるニヒリズム / 自由の恐怖 / 違反と禁止 / 真理について / 宗教と歴史 / 古代の獲得 / 知行合一 / 歴史の死 / 行為と観照 / 歴史と文学 / 予言者の悲劇

IV

  • インドでの戦慄 / 信じられないこと / 人権について / 浄、不浄の観念 / インドの上流家庭 / カースト制度の打倒 / 菜食主義 / 結婚の条件 / 差別の解消 / 不寛容な社会 / 差別と区別 / 個体という幻 / 裁きについて / 自然の意志 / 意志と煩悩 / 忍苦の世界

V

  • 宿命について / 絶望について / 懺悔について / 後悔について / 取り戻せない過去 / 希望について / ある体験(一) ・ (ニ) ・ (三) ・ (四) ・ (五) / 自分の知らない自分 / 死の統御について / 死の自覚について / 自覚の限界について / 病気の診断について / 羞恥について / 人生の長さについて / 人生の退屈そして不安(一) ・ (ニ)

あとがき