法律学習入門 ― その作法と常識

井口茂. 法律学習入門: その作法と常識. 改訂第2版, 法学書院, 1987-03-30, 319p. ISBN4-587-23011-1.

2009-06-13 図書館321 (1400円) 2009-06-13/07-07 ★3

感想

先日読み終えた、弥永真生『法律学習マニュアル』と一緒に借りてきた。同時に読んでたんだけど、どっちに書いてあるのか混同するので、この本は後に読むことにした。この本のほうが、昭和本にありがちな抽象的で具体性が乏しい記述が多かった印象がある。とはいえ、最後のレポートの書き方はヒントになった。

メモ
  • 20 「この頃は公立学校の教員採用でも校長や教育委員にコネのある者が優先されるのでは? と昭和54年3月3日付朝日新聞「声」欄の投書は語っていた」
  • 115 「加藤秀俊『自己表現』(中央公論社)によると、だいたい日本の文章のスタイルというのはエリートの文語スタイルを基本にしており、徳川時代儒者の伝統がこんにちの官僚や学者の文章につながって、結局、難しい表現法となってしまったのだろうだが、法律の文章はその極端な例ということである(同書172ページ)」
  • 302 第一ページを重視する
  • 320
  • 1.1. 問題は必ず5回読め。
  • 1.2. そして題意を考えよ。
  • 2.1. 答案構成は1問につき、20分使え。
  • 2.2. 答案では第1ページに問題点を指摘せよ。
  • 2.3. 答案構成の最後に、問題と論点の法律体系上の位置を再検討せよ。
  • 3.1. 答案はきれいな字で書け。
  • 3.2. 答案は5枚(5ページ)前後で仕上げよ。
  • 3.3. 理由づけは知っているだけあげよ。
  • 3.4. あいまいなことは絶対書くな。
  • 3.5. 反対説を知っているときはその根拠をあげ、一理ありとすること。
  • 3.6. 判例も正確に知っているものはこれにふれよ。
  • 3.7. 書き終えたら必ず読みなおせ。ベルが鳴っても答案を集めにくるまで読みなおせ。
  • 3.8. 時間が余ってもベルの前に答案を提出するな。何度でも検討し、読みかえせ。
目次

1.法律学の学び方

  • 1.法律学習へのアプローチ
    • 1.法律学習の基本マナー:法律学は努力の学問/法律学習にも方法がある/まずやさしい本から/基本書を選ぶには/基本書の読み方/読みこみの方法は自分にあった方法で/読み、かつ考える/自分にあった学習法を/判例の動きにも注意/司法試験の科目選択
    • 2.法学部初年度生への助言:学習目標としての国家試験/先んずれば人を制す/講義に出よう/学習は積極人間になって/法律学は大人の学問/六法全書や法学辞典を備える/まず、法解釈学をしっかりと/休暇をいかそう/夜間部・通信教育部の読者へ
    • 3.独学者のための法律学習法:独学こそ学問の正道/法律学と独学者/他学部出身も臆することなかれ/受験と法律学習/学習に適する環境をつくる/どこででも学習はできる/強い精神力が必要/短い勉強時間でもなかみを濃く/健康管理も重要/独学書と基本書/答案練習会の利用/独学と雑談/耳からの学習も有効
  • 2.初学者のための法律文献案内

2.法律学習のための常識

  • 1.はじめに:法律の文章は難しい/法律学や法律用語は技術的/法律学習も約束事にしたがおう
  • 2.法律解釈の常識
    • 1.法律の解釈:法律の解釈とは/法律の解釈も難しい
    • 2.法律解釈の方法いろいろ:法規的解釈(定義的規定)/文理解釈/論理解釈/拡張解釈・縮小解釈/類推解釈・反対解釈/勿論解釈/正しい法律解釈の態度
  • 3.法律用語の常識
    • 1.難しい法律用語:法律用語は一般からは悪評/難しい感じをもたせる専門語
    • 2.法律用語を正しく習得するために:法律用語は技術語/正しい国語や漢字の知識を/意味も考えよう/耳からの学習ではアンテナを張ろう/法律用語に興味をもて
    • 3.まぎらわしい法律用語
    • 4.表記を間違いやすい法律用語
    • 5.読みにくい法律用語
  • 4.六法全書の常識
    • 六法全書/凡例(はんれい)で約束ごとを知る/収録法令/法令の検索法/公布、施行の期日と改正経過/本文(条文)/条名表示と項番号/参照条文
  • 5.判例学習の常識

3.国家試験と法律学

  • 1.短答式(択一)試験に強くなる学習法
    • 1.国家試験と短答式試験:国家試験に短答式試験はつきもの/人には得手不得手がある
    • 2.短答式(択一)試験に強くなるには:教科書はスミからスミまで読む/条文を徹底的に重視する/附属法令・隣接法域にも留意する/コメンタールの利用/回答は通説判例の立場から/カンを養え―問題に慣れる/過去の試験問題もこなす/間違った問題は教科書で確認する/典型問題は整理しておく/判例・法律の改正点に注意する/試験直前に総整理ができるように/アレルギー意識を捨てよ
  • 2.合格(論文)答案につながる学習
    • 1.論文試験は昔もいまも天王山
    • 2.説得力のある論文答案を書くために:何よりも教科書の完全理解が前提/教科書にほれこむ/基本書を補え/読むべき箇所を読む/論点をおさえる/根拠を学べ/判例にも注意する/科目によって事例を分析、解決する学習法を/優秀答案も参考にする/文章ノイローゼを捨てよう
  • 3.口述試験のための心得
    • 1.準備:口述準備でも先んずれば人を制す/弱い科目に力を入れる
    • 2.心がまえ:教えを受けるいい機会/謙虚であること/自信をもて/もう一度といわれたら
    • 3.試験の日々:勉強のスケジュール/口述体験記よりはラク/ことばははっきりと/黙ってしまうのは答案を書かないのと同じ/一問一答がよい/助け舟には乗ろう/終わった科目にくよくよするな/口述試験も人間関係の一つの場

4.法律答案・レポートの作りかた

  • 1.短答式試験の解きかた:解答の順序は自分にあう方法で/設問が何を問うているかをつかむ/枝ごとに○×を/簡単な設問から解答する/事例の問題は図解する/一度出した答えは大切にする/解答を再検討する
  • 2.論文答案の作法:題意をはあくする/答案構成を十分に/読む身になって書く/第一ページを重視する/いきなり論点に入る/根拠・理由づけは論文答案の命/知っている判例はもりこめ/答案は学説案内ではない/過ぎたるは及ばざるがごとし/答案は必ず読みかえす
  • 3.レポート作成の際の留意点:課題を考える/不可欠な基礎作業/全体の構成を考える/材料は全部使わなくてもよい/下書きをする/注や引用は正しい方法で/推敲する