脳内イメージと映像 文春新書006
吉田直哉. 脳内イメージと映像. 文藝春秋, 1998-10-20, 229p., (文春新書, 006). ISBN4-16-660006-0.
1999-08-20 IKNT 745円 2009-09-11/24 ★2.5
感想
テレビ制作者の映像論。
もともとは、『色と形の深層心理』と同様に、色彩と記憶の関係を探りたくて、参考にしようと、積読しておいた。むかしは、タイトルだけで、本を選んでいたため、あとから、色彩と記憶には関係がない「映像論」なのに気づいた。もったいないので読もうとしたけど、慣れない文体だったので、読まないことにしていた。
ところが、今回、アバターコミュニティとリアルとの関係を紐解きたく、そのヒントになるかもしれないと思い読んだ。
実際に読んでみると、関係していたのは、第1章と終章だけった。
ほとんど知識がない分野の映像論として、読み物としては、面白かった。とくに、テレビ制作の裏側の記述がとても面白かった。どうやら『映像とは何だろうか ― テレビ制作者の挑戦 』isbn:4004308429 の方が、もっと面白そうだ。
終章で、筆者が「〔略〕映像の延長が脳であるようなことになったら、そのときは人間はもう、確実に一巻の終わりであります」と警句している。アバターコミュニティなど仮想のものは、危険な要素が多いのかもしれない。ただし、著者の理由は、新しいものの否定でしかないので、より具体的な説明が欲しかった。
メモ
- 28 「映画のなかの夢は、映画そのものと全く同じなのである」『視覚的人間』
- 58 「モンタージュは、概念をつなぐものでは決してない。モンタージュは、時間をつなぐものなのだ」
- 120 無機物にさえ感情移入する観客〔略〕
- 122 映画が営業的に成り立つ・当たる要素
- スペクタル・セックス・サスペンス・SFX
- 浪費・煽情・臨死(ニアデス・死への接近)・妖術
- 126 かかわりやすい映像
- 格闘、ちゃんばら、ガンファイト
- ベッドシーン、またはベッドなしの類似シーン、そこにいたる過程
- カーチェイス、その他の逃亡と追跡
- 美男美女、その逆境、あわや危機一髪
- 怪奇、非現実の異相、怪力乱心
- 天変地異、自然の猛威
- 166 「それにしても、赤土色の川水でシャツをこんなに真っ白にする彼らの洗濯技術に驚かされました」という何気ないテロップしたら、石鹸会社の研究員から連絡があった話
- 225 「〔略〕ほんらい脳の延長であったはずのコンピュータの地位を逆転、脳をコンピュータの延長にする路線です」
目次
- はじめに
- 1. 暗闇との関係
- 2. 現実との関係
- 3. 言葉との関係
- 4. 音楽との関係
- 5. 物語との関係
- 6. 未知との関係
- 7. 内奥との関係
- 8. 伝統との関係
- 終章. 通信との関係