ケータイで人はどうなる

2010-05-30 図書館 (1575円) 2010-05-30/06-27 ★3

感想

良く言えば、ケータイ社会でどうなるかが予想されている。悪く言えば、コンピュータ社会やインターネット社会で予想されているものに、ケータイ特有のモバイル機能を付け加えただけ。

結論は、感情を持って主体的に生きましょうってことなのかなと。あとは、多様性を理解するとか。

本書で指摘されている問題を抱えたまま成長したから、「感情」を持てと言われても、いまいちピンと来ない。あえて言えば、感情とは、生きるか死ぬか、やるかやられるかという生命維持レベルで発動するものだとしか思ってない。

著者は、機械を通すと、まるで狭い窓から覗いているようなものだという。これは、裁判における事実認定などでも、裁判官に法律以外の特別の知識を用いたり、裁判外で知り得た情報を、判断に使うことは避けなければならない意味では、狭い窓から覗いているようなものである。

デジタルネイティブとして見させてもらうと、情報端末やメディアの本質を理解してないまま、感情こそ人間的なものであり、生身の人間とのふれあいが最高だという、むかしのやり方が良かったという、現状維持バイアスで書かれているだけなのかな。もちろん、これからは情報端末が氾濫する時代になるから、それに対応しないといけないともあるけど、具体的な内容は書かれていない。

メモ
  • 心と体の問題:「いままでの先端的な機械は「使いたい」熱心なファンか信者が使ってくれたのだが、全員が使う機械ならば使いたくない人も使う気にならなければ駄目だ。この点で多くの研究者が誤っている。」
  • IT・ハイテクの急激な発展によって、専門家でも短時間しか使えなかった高価なコンピューターが、いまでは誰でも持てるようになった。
  • 「便利なことはいいことだ」と、まるで「便利さ至上主義」とでも言えそうな、利用者の気持ちを汲み取らないで開発されている装置が多い。
  • 人間は機械に囲まれ、機械とつき合って暮らさないといけなくなった。しかし、機械には感情がないので、つき合うのは難しい。
    • #機械という考え方はおかしい。新聞・雑誌・漫画などのメディアは、むかしからあった。それが電子化されただけで、メディアに感情がないかというと、メディアの発信者には感情がある。匿名掲示板などでは顕著だ。
  • 機械からの大量の情報によって、受け身で行動するようになる。しかし、それは偏向した考えにも無批判になりがちで危険である。
    • #テレビのように電源を入れてチャンネルを選択したら垂れ流ししてくれるメディアなら受け身になるが、ウェブは選択肢ないといけない。
  • 感情を交わすことこそ人間の行為である。
  • 一方で、機械を通すと、感情を丸々写しとることができない、狭い窓から覗いているようなものである。
  • このように機械に囲まれて生活していると、感情抜きのコミュニケーションが増え、直接な生の交流が減る。このため、他人の感情を理解しなくなる、建前だけのつき合い、生身の人間が苦手になる、二次元愛などの問題が起きてくる。
  • 一方で、機械に合わせた思考を持った人間が現れてくる。すると、社会の意識が育たないとか、逆に、自分の無力を感じるようになる。
  • さらに進めば、みんな一様な考えを持ち出すだろう。
  • ケータイが、個々人にカスタマイズされることによって、一様化を避けられるかもしれない。一方で、ケータイ同士がコミュニケーションすることによって、また、一様化される。
  • 一様化によって、極端な社会になってしまう。正規分布曲線のような社会が理想である。
  • 仮想世界と現実世界を区別するが難しくなる。一方で、積極的な利用も考えるべき。
  • 新世代は、機械とともに生きなければならない。「一様性に浸っていては生きる意味がない」ので、感動と積極性を育まなければならない。
目次
  • IT・ハイテクの急激な発展
  • 人間を中心にして進もう
  • 人間と機械は入り乱れる
  • 受身の姿勢
  • 感情の波動
  • 機械の狭い窓
  • 乾いた人間社会
  • 機械流に生きる人たち
  • 一様化の波
  • ケータイと二人きり
  • 狭くなる世界観
  • 仮想世界をさまよう人たち
  • 新世代を超越する