つながり進化論―ネット世代はなぜリア充を求めるのか 中公新書2100

2011-05-10 図書館 (840円) 2011-05-11/23 ★4

感想

ネット上のコミュニケーションのお話。技術的なことと心情的なことの両方が書かれている。心情的なことについては、メリットとデメリットの双方を併記していてバランスが良かった。

読書するときは、目次を眺めることにしているけど、体系や流れが理解しやすい構成になっていた。また、文章もパラグラフ志向で書かれているので、非常に読みやすかった

メモ
  • 61-65:時間差のあるチャットとして「電子会議室」があったのを思い出した
  • 71:ISDNがデジタルで、ADSLはアナログだというが、ISDNは帯域を狭くしたADSLでしかないと思っていた。元NTTなのでISDN擁護の立場にいるのだろう
  • 100-101:テレビ電話の規格が、176×144とか352×288となっていて、ケータイの動画に流用されたようだ
  • 113-117:キャプテンの表示能力とiモードが似ていたのを知る。キャプテンはまったく普及しなかったが、iモードを普及させたのはスゴいかもしれない。技術屋のショボい妄想じゃ普及しない
  • 134-:テレビ電話が普及しない原因を探ってるけど、ニコ生で顔出しは一定数いる。同じ時間に集まる工夫が必要だと思う。後述されてたかもしれない
  • 134-137:セカンドライフが流行らない理由も議論してるけど、金持ちの慶応の教授や学生には永遠に解らないだろう
  • 139:ネット恋愛の特徴:1女性は簡単に相手が見つかる。2男性はすぐ会おうとする。3会ったときの落差は大きい
  • 141-:メディア・パートナー:メール交換する相手で、批判せず抱擁してくれ、互いに都合のいい関係になり、まるで「鏡の中の自分」のような存在になる
  • 147:ネットは「親密な他者」とのつながり。フォロワーとかもそうかな。古典的なコミュニティに住む親に説明するとき、初めに「誰?」と質問される。誰ではなく、何を言いたいのに
  • 155-:自己表現ならブログや海外系、身近な出来事ならSNS
  • 169-173:絵文字には感情表現が埋め込まれている。感情を読み取るのが苦手な私は絵文字を使わない傾向にあります
  • 177:「ナルシストにとって、仲間とは自分にとって都合のよい演技をしてくれる友人。自分の演技の観客とか、共演者になるのが仲間」
  • 195:「他者に気を遣わず、自分は安心できる」「孤独でないことを確かめ、偶然のつながりに喜びを味わう」
目次

今どきの学生、ネットをどう使っているのか

  • ネットで講義の生中継/ガラパゴスに生息する新人類ジュニア/マイミク300人のゆるいつながり/おじさんは今どきのつながりを理解できない/リア充を求める人びと/技術の進化から心情の変化を考える

第1部 技術から見た人と人とのつながり、その進化をたどる

第1章 個人をつなげるサービス―固定電話からケータイメールへ

  • 1-1 固定電話から携帯電話へ:固定電話の始まり―それは携帯電話も始まりでもあった/電話のつながるしくみ―ダイヤルMを廻せ!/移動する人につなげるしくみ―固定と携帯の違い/第一世代のアナログから第二世代のデジタルへ―多くの人が同時に使える携帯/第三世代のしくみ―通話の途切れない携帯電話/電話とデータの時代へ―20年で世代交代
  • 1−2 電話からメールへ:パケット通信のしくみ―データも電話も映像もパケットで送られる/28桁のアドレス―すべての持ち物がネットにつながる/メールを送るしくみ―メールはコンピュータを介して送られる

第2章 新たなつながり方の誕生―パソコン通信からTwitter

  • 2-1 パソコン通信からインターネットへ:CMC―電子掲示板で始まった新たなつながり/パソコン通信のつながり―非同期と匿名のコミュニケーション/パソコン通信からインターネットへ―サービスとアクセスの多様化/アクセスのしくみ―アナログからデジタル、そしてアナログから光/リッチな通信とは―安価な定額料金とサービス品質のトレードオフ
  • 2-2 2ちゃんからTwitterへ:ウェブのコンセプト―情報がハイパーリンクでつながる/ウェブのしくみ―URLとHTMLとHTTP/ハイパーリンクのしくみ―ブラウザとアンカータグ/2ちゃんのつながり―名無しさんとコテハン/ブログのつながり―ホームページとコメント/mixiのつながり―マイミクと足あと/Twitterのつながり―フォローとハッシュタグ

第3章 失敗してしまったネットのサービス

  • テレビ電話―通信エンジニアの夢だった/テレビ電話―料金は1000倍から2倍になったけど/チャット―チャットレディたちのビジネスに/セカンドライフ―CGが作る仮想世界のアバター/キャプテンはニューメディアの旗手だった/キャプテンの失敗はiモードにつながる/人と人をつなげる技術の進化とサービスの実現

第2部 心情から見た人と人とのつながり、プラスとマイナスのつながり方

第4章 つながりの心情―プラス面

  • 4-1 自由と平等―ケータイとメールで変わった心情:場所の自由―他人の目を意識しない/時間の自由―自分の都合を優先する/行動の自由―つながりの安心感/参加離脱の自由―つながりを選択する/地位の平等化―相手の顔や声を意識しない/なぜ普及しないのか―テレビ電話とセカンドライフ/恋愛―ネットの出会いがリアルにつながる/自分との語らい―メール交換で心が通う
  • 4-2 仲間探しと助け合い―ネットコミュニティで変わった心情:親密な他者―ネット世界の魅力/つながりのうれしさ―価値観が同じ仲間を探す/ブログとmixi―つながりの心情/Twitter―偶然のつながりに喜びがある/趣味の自己表現―人はなぜ情報発信をするのだろう/信頼できる他者―ネット世代のもうひとつの魅力

第5章 つながりの心情―マイナス面

  • 5-1 束縛と演技―ケータイとメールで変わった心情:つかず離れず―若者たちはみんなぼっち/メール依存―つながりの確認プロトコル/「びみょう」な演技―顔も声もないために生じること/ネットの幻想―運命の人に出会える/擬似恋愛―演技してくれる恋人
  • 5-2 悪意と疲労―ネットコミュニティで変わった心情:悪意のつながり―顔も声もない世界の怖さ/ネットいじめ―あいまいなリアルとネットの境界/オリジナルなきコピー―情報(記号)が人を支配する/炎上―棲みにくくなったネット世界/mixi疲れ―それは空気の読みすぎ/ネトゲ依存―ストレスから逃げたい

第3部 人と人のつながりの未来を考える

第6章 人の心情はどう変わっていくのか

  • 6-1 ネット⊃リアルに進化する:ネットのつながり―薄いか、濃いか/つながりの量―孤独でないことを確かめる/Twitter効果―ネットがしだいにリアルを包含してきた/偶然のつながりを求めて―パブリックとプライベートの境界があいまいに/ネットとリアル―2000年代に急増したネットの時間
  • 6-2 リア充な世界は縮んでいる:第三の場が少なくなった/リア充という意識―つながりとやすらぎ/ネットで挨拶しても、リアルで挨拶しない/正義はいずこ―自分自身が縮んでいる

第7章 これからのネットに求められること

  • 7-1 人とモノと街をつなげるネット:人―似たもの同士をつなげるカフェ・テーブル/モノ―東京タワーがつなげる人の輪/街―人目線と鳥目線で街の見え方は違う/車―街とナビがつながる/電車―つながりで車内がなごむ/イベント―アートがつなぐ人と人、人と街
  • 7-2 シニアたちのリアルとネット:シニアのネットつながりはこれからだ/シニアたちのリア充

あとがき/参考文献