おこだでませんように

2013-06-03 SIS (1575円) 2013-06-03

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感想

読み聞かせすると、泣きだすくらいに感動するらしい。一般的な感想は、ほかのウェブに任せる。

大人のコミュニケーション能力に疑問を投げかけている立場から意見を述べたい。

あらすじは、アダルトチルドレンの大人たちとズル賢いほかの子どもたちに囲まれて、絶えず大人たちから怒られるという、社会的ないじめに遭っていた。入学から3か月ほど経って、七夕の短冊に怒られないことを願いに書いたら、コミュニケーション能力に障害があると疑われる教諭(もしかしたら作者か)が、ようやく気づいて、指導の仕方を改めたというお話。

子どもは泣けば、泣かせた相手が制裁を加えられるのを知っていて、演技しているかもしれない。妹は母が帰ってきた途端に泣き出している。カーネギーの『人を動かす』の中に「盗人にも五分の言い訳」があるというので、一定の言い訳を聞かないといけないと思う。

大声で歌っていたら、入学式の日には誉めて、平時の休み時間に怒るのであれは、教諭はアダルトチルドレンの振る舞いである。税金をもらっているプロとしていかがなものかと思う。

主人公の児童は、鉛筆をかじっている跡が酷いので、かなりストレスを溜めているようだが、担任教諭が気づかないのは、税金をもらっているプロとしていかがなものかと思う。

教諭が七夕の短冊に願い事を書いて、ようやく教諭自身が頻繁に怒っていたのに気づくとか、税金をもらっているプロとしていかがなものかと思う。

なお、兄は妹のことが好きなようだ。図画工作の作品と思われる絵に僕と妹を描いている。

以上のように、教諭に恐ろしいほどの過失があるのに、七夕の短冊に願いを書いて叶ったという感動物語に持っていくというところに、教諭をはじめとした大人側には一切の過失はなく、むしろそれに気づいてやったんだ感謝しろという潜聖増上慢のような「悪」を見た。

あとがきに小さい字で「私たち大人こそが、とらわれない素直なまなざしをもち、子どもたちの心の中にある祈りのような思いにきづくことができますように」と述べていて、いちおうフォローしているようだ。

主人公の男の子が言い訳をしないのは、昭和的な男っぽさとしてのかっこよさはある。しかし、仲裁するとしたら、男の子の言い分も聞くべきだし、現代社会では、いかにおかしさがあっても言い訳しておかないと不利になる。

最後に、以上のような感想を持った私であっても読んでみて感動した。たしかに、単純に感動した方が幸せでいられるであろう。しかし、その感動は、本当なのだろうか、どこか嘘をついていないのかという疑問を持たずにはいられなかった。

なお、こういった感覚が、自分ではズレているのかという不安があったが、あんがいまともなようで、むしろ、テクストをよく分析できていたと自信が湧いた。

参照:第35回大人絵本会「おこだでませんように」 - Togetter : http://togetter.com/li/341723