宗教と法と裁判

2010-07-06 図書館 (2163円) 2010-07-16/24 ★4

感想

信教の自由や政教分離の原則を理解するために読んだ。学術書としてみると、やや内容が物足りなく感じるけど、一般向けに対応しているのでしかたない。ただし、その分、読みやすかったし、1冊まるごと、信教の自由や政教分離の原則などを扱っているので読み応えがあった。

メモ
  • 46 「信教の自由は、…国家に対して主張しうる権利であるが、…私人からの信教の自由の侵害も容認されることはないはずである。」
  • 64 憲法20条第1項後段の「政治上の権利」について、広く政治上の影響力と解釈する説があるけど、そのように理解すると、宗教団体の「政治的」な行動が過度に規制させるおそれがある。「政治上の権利」とは、立法権や行政権など統治権とされるとしている。
  • 74 三重宇部生コン工業事件(名古屋高判昭38・4・24、判時333・10)
  • 80 大阪地藏訴訟最高裁判決(平4・11・16、判時1441・57)
  • 98 「…目的について、かかわる側(国家)において宗教的意義が存しないことを立証しなければならない(違憲性の推定)。さらに、その際、目的についてはその主観的側面だけでなく、客観的側面についても判断されるべきである。」
  • 109 夫婦間でも信教の自由は手厚く保障されるであり、判例でも信仰を理由に婚約破棄は認められてなかったし、結婚後も信仰を相互に理解を増進する努力義務を負う。一方で、破綻主義も認めている。
  • 京都地判昭45・1・28、判時615・56
  • 大阪地判昭42・7・31、判時510・57
  • 130 「日本国憲法の信教の自由、政教分離規定の先進性、日本の宗教に対する国家の介入、統制、弾圧の歴史を考えれば、宗教的人格権という「独自」の概念を立てる意味は十分にあるように思われる。」
  • 141 「宗教法人法では、繰り返し信教の自由に対する配慮をうたっている(1条2項、84条、85条)。」
  • 158 宗教法人への規制強化として、「優遇税制」是正の問題があるが、税制上の問題である。税制の見直しは、ほかの公益法人とのからみも出てくる。
目次

はじがき
第1章 はじめに―宗教法とは何か

  • 今日の社会と宗教/宗教と法

第2章 近代日本の政教関係

第3章 信教の自由と政教分離

第4章 宗教をめぐる裁判

  • 概観/信教の自由をめぐる裁判/政教分離をめぐる裁判/信教の自由と政教分離の「衝突」/目的効果論の展開/宗教団体の自律権をめぐる裁判/家族生活と宗教をめぐる裁判

第5章 宗教的人格権について

  • 自衛官合祀訴訟と宗教的人格権/宗教的人格権の展開

第6章 宗教団体法制の歴史と宗教法人法

  • 近代日本の宗教団体法制の歴史/宗教法人令から宗教法人法へ/宗教法人法の基本原理

第7章 宗教団体と税金

  • 宗教団体をめぐる税制/税務調査について

第8章 宗教と生命倫理と法

  • 生命倫理と自己決定権/具体的ケースについて

参考文献