スウェーデンから何を学ぶのか―生活者中心の社会を築くために

2003/2004? BKNS 200円(2415円) 2007-11-26/12-10 ★5 図書館寄贈 364.0分館

感想

つい最近まで「スウェーデン型」を主張する人が多かったので、調べてみた。

1994年発行なので、その後10年ほどの推移は、また別の資料をあたらなければならないようだ。

非常によくできた政治・行政システムで、うらやましい限りだ。

父は「高負担・高福祉型は人口が少なくないと成功しない」という。理由を聞いても、「スイスくらいの規模なら成功した」とか的を射ない回答だし、「じゃあ、北海道だけで行うと成功するんじゃないか?」という質問には、何ら返答できず、体系化された知識ではないようだ。

父の話の情報ソースが良く分からず、ずっと疑問に思っている。調べていくと、この情報ソースは、まだはっきりしていないけど、どうやら日経あたりのようで、エコノミスト(投資家)や企業などがつながっているようだ。つまり、投資家や企業などは、高負担・高福祉型にされると、負担だけが大きくて収益が著しく減る。だから、嫌がる。

なお、本書では、「スウェーデン人に言わせると、日本の方が、人口が多く、マーケットが大きいから成功しやすいだろう」といったことが書かれていた。

メモ
  • 29下 「スウェーデンの場合は家族が増えるにつれて、広い住宅が社会保障として提供されます。家賃も、家計の二五%を超えた分は家賃手当として社会保障から出されます。
  • 58上 「政策議論においても、常に「特定の福祉施策の推進=財源の見直し」が前提になっています。財源のことを言わないのでは、責任ある議論にならないとされています。
  • #いまでこそ、日本でも「財源」が問われるけど1994年の時点で語られていることに驚き
  • 59上 「具体例をいうと、「私が市長になったときは〔略〕」と公約と財源を提示しながら選挙をします〔括弧内略〕。
  • 66 農業国 → 軍事大国 → 経済大国 → 生活大国?
  • 74上
    1. 子どもが生まれたときの不安
    2. 職を失う不安
    3. 病気になる不安
    4. 社会的な地位を失う不安
    5. 事故に遭う不安
    6. 老後の不安
    7. 教育の機会を失う不安
  • 74下 日本「メセナ」「フィランソロフィー」 一方、スウェーデンでは、これらの社会貢献は二次的なもの。「利益を上げて、相応の税金を払い、雇用の機会を創造する」
  • #『起業バカ2』のツカサの社長と同じ内容
  • 87下 「一方、わが国は、伝統的に健康な成人を基準にものごとを判断してきました。このような体制では必ず社会的な弱者に先に被害が出ることは多くの過去の経験が教えるところです。」
  • 93下 「同じ資料をもとに議論すべきです」
  • 118下 「ベンチがあると歩行困難者の連続歩行距離が倍に伸びる…」
  • 122下 「…その目的は最低生活水準ではなく、平均生活水準を達成することです。」
  • 138下 『大街道(ストーラ・ランドス・ヴェーゲン)』1909年作品に、日本人が登場する
  • 154下 「スウェーデンの政党はすぐれた文化活動をしています。」
  • 167上 「スウェーデンには一枚のカードによる背番号システムが存在します。」
  • 168上 たとえば、一票の格差が三・一八倍もあるシステムでは、…。スウェーデン的な発想だと「一票格差が三・一八倍もあれば、その選挙区民は三・一八分の一の所得税でいい」と思います。
  • 172上 「スウェーデンは小さい国だからできたという考え方」に反論している。市場が大きい方がはるかに有利
  • 175上 コンセンサス・ポリティクス。「…政治に対する信頼感がスウェーデン福祉国家の絶対条件です」
  • #日本が福祉国家になれないのがわかった気がする
目次
  • 序章 スウェーデンから何を学ぶのか(一番ヶ瀬康子)
  • 第1章「曲り角」の福祉国家(中村秀一)
  • 第2章「予防志向の国」と「治療志向の国」(小沢徳太郎)
  • 第3章 高齢者の住環境(外山 義)
  • 第4章 スウェーデンの経済・社会政策(ダグフィン・ガト)
  • 第5章 生活に根づく芸術と文化(宮内満也)
  • 第6章 福祉とジャーナリズムの関係(ヤード・ランソン)
  • 第7章 生活大国スウェーデンの理念と社会システム(岡沢憲芙)